数年前、イギリスでデンマークの文化について書かれた本がベストセラーになりました。読んだことがないので詳しくはわかりませんが、国民幸せ度世界ランキングの上位にたびたび上がるデンマークの、何が人々を幸せにするのか、その要素の一つとしてデンマーク人が愛してやまない言葉「HYGGE(ヒュゲ)」について紹介されているそうです。
「ヒュゲとは」
「昨日、たまたま小学校時代の友達と道でばったり会ってさ。すごく懐かしい話で盛り上がったよ。」「週末はなにも予定ないけど、家で美味しいもの作って、ずっと読みたかった本でも読んでのんびりするわ。」「クリスマスは家族みんな集まって、田舎の家で過ごすのよ」
こういった会話の相槌として、90%の確率で使われるのが「わー、それはヒュゲだね!」です。
元教会だった建物の集会場。クイズ大会やコンサート、共同ディナーなどが毎週催されます。
ヒュゲとは、心がほっこりするとき、心地よい空間で、気の合う人たちと触れ合うときなど、とてもいい感じにリラックスした状態の時に使う言葉です。
ヒュゲに関しては、もう、一冊の本が書けるんじゃないかというくらい、デンマーク人にとって大切な哲学のようなものです。幸せについて研究をしている団体によると、デンマーク人が幸せと思う理由にこのヒュゲが大きく関与しているそうで、日々の生活により多くのヒュゲを作ることで、人々は幸せになれるのだそう。
確かにデンマーク人は生活の中に、小さなヒュゲをたくさん作り出すのがうまく、別に特別なことをせずとも、一言のユーモア、ちょっとキャンドルを灯したり、室内の明かりを調節したり(これが実はとても重要)、家族や大切な人達との時間(もしくは自分一人の時間)を大事にしたりすることで、ヒュゲは出来上がります。
なんだ、ヒュゲなんて余裕で作れるよ、と思われるかもしれません。そして実際ある程度ならデンマーク人も認めるヒュゲは日本人でも作れます。
しかし、本格的にヒュゲを追求していくとなると、これがなかなか奥深いのです。そもそもヒュゲかヒュゲでないかの判断基準がデンマーク人にあり、それも年代、出身地域、趣味などでだいぶ代わってくるからです。
例えば、日本でも人気の北欧ビンテージ食器。野暮かわいい70年代デザインですが、「どう?これヒュゲじゃない?」と見せると、40〜50代のデンマーク人はよく「おばあちゃんの家で使ってた(ババくさい)…」と苦笑いをしますが、20代など若い世代になると「なんかビンテージってヒュゲね」となるのです。
また、コペンハーゲン人(特に若い女性)は時として、ヒュゲを会話の中で湯水のように使いますが、素朴なユトランド半島出身の人では若干ヒュゲの出し惜しみが見受けられます(じっくりと見計らって、正しいタイミングとシチュエーションで使う=共有範囲が限られる)。
私も、ほぼ毎日のようにデンマーク人との会話の中でヒュゲを使用している割に、その使い方がまるで女子高生が何にでも「かわいい」と形容するようなものだと気づき、在デン16年経っても、というか16年経ったからこそ、ますますヒュゲの深みにはまっている感じです。
さて、次回のデンマークおたま便りは、コペンハーゲンとか主要都市をすっ飛ばして、私が住むムン島をご紹介します。